音楽療法について

1.音楽療法とは?
2.活動
3.臨床例

1.音楽療法とは
音楽療法とはどんなものかと聞かれれば、ほとんどの人は「癒しの音楽」とか「リラクゼーション」を思い浮かべることでしょう。 それも、ストレスの解消には効果のあるひとつの療法ですが、治療目的の音楽療法とはクライアントに直接的に目的を持ったセラピーを行なうもっと積極的なものです。

今まで、別々に活動をしていた、日本バイオミュージック学会と臨床音楽療法協会が合体し、日本音楽療法学会が発足し、現在はその団体が統括し、療法士の認定を行なっている。 
2001年に認定された95名の療法士を含め全国に500名あまり認定されている。
学会が提唱する音楽療法の定義とは
「疾病と健康にかかわる音楽の機能と役割を学際的に研究し、音楽療法が医療、福祉、健康、教育の領域において積極的に展開することを目指し、音楽療法を通して、人々の健康を維持・促進など、広く社会に貢献することを目的とする」
平たく言えば、音楽という媒体を通して、心身に不具合のある人と深く接し、共に喜びや、動きを求めることで本来の人間性の回復を図ることだと思います。

2.活動
家内の満理子が治療を受けている例をあげます。
茨城県取手市の心身障害者センター「あけぼの」で行なっている、障害者支援活動のひとつで音楽療法を実施しています。 月に2回認定療法士のO先生と「あけぼの」のスタッフ2名で約30分のセッションを行なっています。 満理子の場合は個人セッションがふさわしいと判断されました。 セッションはいろんな形態を取っており、治療の目的によりグループセッションなども行なわれます。
最初に面接を受け、家内の心身状態を把握して、治療計画を立て、本人又は家族の同意を得ます。
毎回、個別にその日の訓練予定を立て、その訓練の目的と方法と後日その効果又は結果を家族に報告していただきます。 訓練の状況はビデオに撮り、訓練状況が家族にもわかるようにされています。

訓練のパターンは決まっていて、

  1)訓練を始めるスイッチ効果(覚醒)
  2)ストレッチ(脳の活性化のために手、指先のストレッチが必要)
  3)メインメニュー1(楽器演奏や思い出の曲を鑑賞して語り合う。楽器演奏は主にキーボードであると言うことと、
              思いでの曲を鑑賞することはあくまでもきっかけに過ぎず、
              関連した時事的内容や、記憶をたどる話しの内容展開が非常に重要であるということ)
  4)メインメニュー2(音当てクイズなど遊び感覚で楽しむ。効果音当てクイズのようにして楽しんでいるのは聴覚、
              嗅覚からくる人間の記憶は呼び覚ましやすいと言う刺激を目的としていること。
              記憶の一途で聴いた覚えのある日常の音を聞くことでその当時の視覚的記憶や
              その時感じた事などの思想的記憶の呼び覚まし効果を図っていると)
  5)終了のセレモニー(定番の歌で終わり満足感を持って終わらせる)

という感じですが、状況に応じて目的を変化させメニューも変わります。

   

3.臨床例
満理子の場合、訓練を始めて半年あまり13回程度のセッションを受けました。
最初は、文頭に書いてあるよな「癒し」のイメージしか持っていなかったので、効果は期待していませんでした。
やらないよりは刺激になって良いだろうくらいのつもりで始めたのです。 その頃は発病6年目で意識レベルもしっかりし会話もスムーズにできるようになっていました。訪問リハビリも始めていたので、少しづつ向上しているところでした。 しかし、脳血管障害による痴呆症状があり、記憶障害(発病ごに知り合った人の名前は全く覚えられない)や妄想による作話などがみられ、集中力は全然無く、自分で語ったり要求したりする積極性はありませんでした。
回が重なるごとに、先生やスタッフの方たちとの会話が弾み、積極性が出てきました。 与えられた楽器に不満を訴え変えてもらったり、一緒に歌を歌ったり、ひとつの事柄からイメージを膨らませて会話を広げていったりするようになりました。 冗談も言うようになり、最近ではお笑いのキーマンになっています。 キーボードを弾くようになって音の間違いが判ったり、手首の動きが良くなり運動能力にも効果がありました。 特に変化があったのは記憶力です。 訓練を始めてから、「あけぼの」のスタッフの方々の名前や、看護婦さんの名前などは顔と名前がしっかり一致するようになりました。 また、5分前のことも覚えてなかったのに、最近では訓練日に帰ってからどのような訓練をしたか教えてくれるようになりました。(内容はあけぼのと連絡をとり確認します)
先生には失礼ですが、思いがけない効果があったので今回お報せしようと思った次第です。

平成12年11月に行なわれた音楽療法国際フォーラムで発表された臨床例を次に掲載します。 いろんな症状の方を対象に治療をし、その効果が示されているので参考になる場合があると思います。
 1)高齢者
   施設で孤立していた方が仲間に入るようになった。
   老化防止、生きる意欲と活力増進
 2)痴呆
   重度アルツハイマ−の方がこころを開き、セラピストと一緒に歌を歌うようになった。
   意思表示が困難だった方が、自分からリクエストしたり、意思表示できるようになった。
 3)その他
   失語症の方が興味のある話題には熱心にしゃべるようになり、好きな歌なら正確に歌えるようになった。
   中途障害者には、明るさを取り戻し、積極性も出てきた。
   自閉症児の場合、音楽や絵に興味を示すようになり、集中力が出てきた。
   学習障害児についても同様の効果。
   精神・運動発達遅滞者で、言葉や表情を示さない方が自らの意思を発信するようになった。
など・・

ここに挙げたのはほんの一例で簡単に述べただけです。
もし、興味を持たれた方は管理人までメールで問い合わせてください。
   

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