記念BBS
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我が町の車いすの走り屋的存在のデンクルさんが、この度、電動車いすで走行距離を記録し始めてから30,000kmを達成されました。
この偉大な記録を記念して、デンクルさんの車いす人生、30,000kmまでの足跡を振り返ってみました。

デンクルさんと知り合ったのは、満理子がお世話になっている障害者施設の利用者だったからです。
デンクルさんは、脳性麻痺で生まれた時から手足の自由が利きません。 障害者として大先輩なので、私が福祉活動に片足(今では両足)をつっこんだこともあって、いろいろ福祉社会のことなど教えをいただいたり、そして車とバイクがお互い大好きと言うこともあって、すぐに仲良くなりました。
それまでにも、町中では時々見かけ、電動車いすで車道を走ったり、狭いところをフルスピードですり抜けたりするのを見て、危ないヤツだと思っていたのでした。

1.遍歴
ここで、デンクルさんの使用したモーターチェアーの遍歴を表に示します。
いずれの車いすも、スズキの電動車いすです。 尚モーターチェアーの名称はスズキだけに許されるものだそうです。
型式 走行距離 使用期間
Z602
Z601 65ヶ月 ’76.5〜
Z602 61ヶ月 ’81.10〜
MC12S 2348.8km 18ヶ月 ’86.11〜
MC13Sー1 4797.3km 43ヶ月 ’88.05〜
MC13Sー2 4788.0km 37ヶ月 ’91.06〜
MC13S−3 10148.0km 63ヶ月 ’96.09〜
MC16S 7918.0km 34ヶ月 ’01.01〜
合 計 30000.0km 16年3ヶ月

電動車いすに乗り始めたのは23歳の時。 このとき、初めて自分の意志で動ける自由をもらったそうです。
それからというもの、いろんな新鮮な経験を味わい、そしてどんどん欲張りになり、もっと大きな楽しいことをしたくなってきたのでした。
2.冒険
行動力のあるデンクルさんは、電動車いすで何処へだって行っちゃいます。
雨が降ろうと槍が降ろうと(最近は歳のせいか雨や槍が降った時は乗らないようですが・・)、自宅から施設や役所、市内のいたるところへ出没します。
だいたい、月に200kmは走行するそうです。私の車より多いのはなんでや。

バイク好きでアウトドア好きのデンクルさんは、浅間ミーティングへの参加をきっかけに、毎年北海道で行われるバイクの集会(暴走族の集会ではありません)の北海道ミーティングに参加されます。
年に一度、バイクの話をテントの中で飲みながら語り明かすそうです。
歴代の車いすに貼られた参加したミーティングのステッカー


1)24時間耐久走行

そんなデンクルさんが初めて行った冒険は、1980年、デンクルさんが28歳、当時生活をしていた栃木県真岡の施設から、実家のある取手まで電動車いすで完全走破するというとんでもない計画を立てたのでした。 距離にして約79kmにおよびます。
その時乗っていた車いすはZ601という機種で、1975年にスズキが製作した2代目の車いすです。

決行日を5月21日とし、ボランティアの方達と綿密な計画を立て、前もってルートの試走をし、道路の状態、レストタイムの場所や時間を確認しました。それで、決定されたタイムスケジュールを下表に示します。
月日 時刻 距離 予 定
5月21日 20:00 0km 施設前スタート。3時間バッテリー使用
23:00 12km 第1回目4時間バッテリーに交換。レストタイム
5月22日 3:30 27km 第2回目4時間バッテリーに交換。レストタイム
8:00 42km 第3回目4時間バッテリーに交換。レストタイム
12:30 57km 第4回目4時間バッテリーに交換。レストタイム
17:00 72km 第5回目4時間バッテリーに交換。レストタイム
20:00 取手ゴール予定
愛車の整備もし、携帯品購入・準備。 そして、共同通信からの取材申し込みなどがあり、気持ちも盛り上がってきたようです。

実行日になりました。その日は、台風3号の影響で雨のスタートになってしまいました。
ヘルメットに雨合羽、足先は米袋という姿で、緊張のスタートだったそうです。 
その模様はニュースでも放映されました。
途中、いろんな人が激励の言葉を投げかけてくれ、勇気をもらいました。

真夜中の中継点で一休み。 レバーを押している指が痛くなってきました。 しかし、幸い雨が上がり夜空には満天の星が輝き始めました。 しかし、寒い! 車いすは順調。
第2地点に到着するころ、又雨が激しくなってきました。 やはり、指が痛い。

夜が明けた頃、睡魔が襲ってきて、幻覚も見える。 きっと、居眠り運転だったんでしょう。
首も痛くなってきた。 しかし、差し入れのウナギを食べ、復活!
そのころ、車いすの駆動部にも異常が発生。 調整を行う。
お昼頃には、暑さと疲労と睡魔、そして車いすの不調でかなり参ってきたようです。 しかし、サポート隊の励ましもあり、気を取り直してレバーを押すのでした。

あいかわらず、車いすの調子が悪く、負荷が大きいのでバッテリーが予想外に消耗してしまったのです。 そしてモーターもかなり熱を持っています。 人間も車いすもだましだまし走行を続けています。

しかし、ゴールが近くなって来るにつれ、元気を取り戻してきました。
そして、苦労を重ねて、やっと、取手にゴール! 20時30分。
走行時間 24時間20分の冒険が終わったのでした。

2)北海道の大地を

たびたび旅行で訪れていた北海道がすっかり気に入ってしまい、そのうちに、今度は自分の力でなんとか北海道の大地を、自分の意志で、自分の行きたいところへ行きたいと思うようになったそうです。
デンクルさんは、また、とんでもないことを思いつきました。 その目標のために、2年間資金集めや情報収集、そして、綿密な計画を立てたのでした。
そして、最終的に決めた計画は、函館から網走までの772.4kmを1日約24km、33日間かけて走破するというものでした。
資金の調達は、働けないデンクルさんにとって当時の収入源は年金だけだったため、飲む酒やたばこのグレードを落として節約することで貯めていったそうです。 
実行に移すまではいろいろ紆余曲折があったようですが、周囲の後押しもあり、そして、目標の300万円が貯まったので実現の運びとなりました。

1987年7月22日、サービスカーに乗り込み、一路スタート地点の函館へ出発。 途中、栃木スズキに寄って車いすの整備をし、函館に着いたのは7月24日でした。 このとき使用していた車いすはMC12Sでした。
朝日新聞の取材を受け、函館山をスタートしたのは9時半でした。
サポートドライバーを勤めてくれたIさんは、途中で熱を出し、その上クルマのエンジントラブルなどもあり、前途が危ぶまれるスタートになったのでした。

途中での宿泊は、何度か民宿や旅館などを使ったものの、ほとんどはテントを使った野宿だったそうです。
長万部の民宿で出た夕食では、毛ガニ、焼き肉、刺身と豪華なものを堪能したが、食い慣れないものばっかりだったのでお腹を壊してしまったそうです。

釧路では、デンクルさんが参加している浅間ミーティングの仲間と偶然遭遇し、激励を受けました。
雨の日は、真夏とは言え、かなり気温が下がり、革ジャンを着ていても、かなりの寒さです。 
この年は、地元の人も驚くくらい雨が多く寒い夏だったそうです。 そんな時、すれ違ったドライバーの方達の励ましが何よりもうれしかったそうです。 しかし、すれ違うクルマから跳ね上げられる水しぶきには参りました。 その中でも一番水飛沫をかけられたのはバス。次に普通の乗用車。 一番気を使ってくれたのはダンプでした。 ダンプの運転手さんの中にはわざわざ車を留めて差し入れをくれた人もいたそうです。

8月に入っても、雨にたたられることが多く、雨男のレッテルを貼られたそうです。
つかの間の晴れ間には、貯まった汚れ物の洗濯をし、クルマのアンテナなどにパンツをくくりつけて走行をしながら乾かしたそうです。
スタート地点の函館山 サービスカー 男の背中に哀愁が・・ 宿泊はほとんどこのテントで
この旅行では、デンクルさんは一つのポリシーを持って実行したのです。
デンクルさんが主導権を持って自分の意思で行動すること。 だから、お願いしたヘルパーさんにはボランティアでなく、有料で引き受けてもらったそうです。 それは、長い期間にわたって、お世話をしていただくことに対して、デンクルさんの気持ちを表したものでもありました。 
今回参加したヘルパーさんの7人のうち5人は障害者との関わりを持ったことのない人で、彼らもこの旅行で貴重な経験をされたことだと思います。 経験のないヘルパーさんを指導するデンクルさんも大変勉強になったそうです。 それは、障害者が助けを借りながら独り立ちするための大事な経験でもあったと思います。

8月27日、33日間の大冒険のゴールを網走で迎えました。 この、長い、長い大冒険でいろいろなハプニング、感動、エピソードがこの場ではとても語れないほどたくさんあったそうです。

この冒険記は、「ロードライダー」誌の’88.1月号に詳しく掲載されました。
この雑誌の記事にご興味のある方は、デンクルさんまたはさだぼんまでメールでご連絡下さい

そして、ゴールしたあと、なんと、デンクルさんは、恒例の北海道ミーティングに参加し、大好きなバイクに囲まれ、参加ライダー達と飲みながら語り明かしたそうです。

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TEAM・SOMENOのステッカー 今回の記念に作った
ボールペンとステッカー
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