あゆちゃんの講演会

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平成16年11月7日

1.きっかけ


 平成16年の4月ごろだったでしょうか、あるオフ会に出席した時、その中にあゆちゃんが居ました。
彼女とは私がホームページを開設して初めてオフ会に参加した際に初めて会いました。あゆちゃんは生まれた時から障害がありました。でも、初めて会ったときにまったく障害を感じさせない明るいキャラクターで、とても魅力的なギャルでした。彼女は彼女自身のことを詳しく紹介しているホームページを運営していて、その中で自分自身の障害のことや障害者の自立のこと、恋愛のことなど日々の生活を通じて訴えていました。
 ホームページのタイトルは「あゆみのGENKIにきらきら☆ぱらだいす」といいます。ぜひ、たずねてみてください。 恒例・車いすで電車に乗っていく遠足の様子

 話を戻して、そのオフ会であゆちゃんに茨城に来たことある?って尋ねたところ、「行ったことが無い」と言うことでした。群馬に行ったことがあるのに、なんで茨城は無いんや?? まあ、当然か・・(あゆちゃんの個人的理由だから)
 そのころ、私は茨城県・取手で新しい活動を計画しているところでした。そこで、冗談半分で、「じゃあ、講演会を企画するから来てくれる?」って聞いたら、「呼んでくれたらどこでも行くよ」とのお応えでした。その場は、それで終わってしまったのです。

 その後、私が所属している障害者の会の集まりで、先ほどの講演会の開催の提案をしたのです。
 その頃、その会は当事者のメンバーがそれぞれの理由で(施設に入ったり・・)めっきり減っていて、活動が縮小傾向にありました。せっかくの活動が、地元の障害者にフィードバックできないのは残念なことです。この講演会を機に、この会の存在をアピールし、会の活動を活性化させたいと思ったのです。
 この会は、発足して10年余り立つのですが、ここ数年大きなイベントはやっていなかったので、メンバーたちはちょっとためらいながらも、やってみようかという気になったのです。
 実現するには、まず、あゆちゃんの了解を得る必要があります。そこで、メールで問い合わせたのが5月の末頃だったでしょうか。あゆちゃんからは快諾を得ました。

2.準備


 さて、それから、実現に向けての準備が始まりました。なんせ、講演会のようなイベントをプロデュースするのは初めてです。じっくり時間をかけてゆっくりと計画を練っていくことにしました。
 それと時を同じくして、身体障害者の社会参加・自立・就労支援を目的とするNPO法人を設立しようという計画も立ち上がっていました。活動の内容は、先の障害者の会と重なる部分が多いため、その会の延長線上で発足することになりました。そのようなわけで、あゆちゃんの講演会は主催が障害者の会、そして協賛という形で新NPO法人が開催することになりました。取手市の社会福祉協議会の後援ももらい、夏の真っ最中に、いよいよ、本格的な準備が始まりました。

特別講演会チラシイメージ  講演会の大きな目的である、我々のグループの活動を理解してもらい、多くの障害者に会にかかわってもらうために、講演会の開催のPRに多くの力を入れたのです。人の目を引くためにできるだけ目立つポスターを作りました。仲間がデザインし、あゆちゃんに手を加えてもらって、とてもさわやかできれいなポスターが出来上がりました。あまり予算が無いので、いろんなところの協力をいただき、ポスターの印刷は取手市の文化事業団の協力をいただきました。そして同様のデザインでチラシも2000枚印刷しました。

 みんなで手分けして、公民館や福祉施設、病院など人の集まりそうなところにポスターを貼り付け、チラシの配布の協力をお願いしました。たくさんの障害者に来てもらいたいのは当然ですが、地域の方たちに障害のことをもっと理解してもらうことも大きな目的でもあります。特に、これからの地域の担ってくれる若い人に、ぜひあゆちゃんの姿を見てもらいたかったので,
近くの高校や大学にも協力をお願いしました。
 また、当日はあゆちゃんは取手に泊まる予定だったので、その夜の身体介助のボランティアも募集しました。あゆちゃんの希望でできるだけあまり介護経験の無い若い人ということで、協力してもらった学校の生徒さんたちにボランティア募集をしました。このボランティア募集も私たちの今後の活動に大きな影響のあるものと位置づけていましたので、かなり努力をしたのですが、講演会開催日が日曜日、翌日が月曜日で休日じゃないために残念ながら、希望は叶いませんでした。結局、会の女性が引き受けてくれたのですが、これはこれで非常に良いものがありました。

 さて、講演会当日も迫ってきて、打ち合わせの集まりの頻度も多くなり、気持ちも高ぶってきました。会場の看板の製作や案内状や新しく始めるNPOの説明、当日渡す資料などの印刷、弁当の手配、当日の役割分担、タイムスケジュールの打ち合わせなどやることが山ほどありました。もちろん、その間にもNPOの設立のための会議や準備もあって、ひさびさに目の廻る忙しさになりました。何度も何度も打ち合わせて、もう大丈夫だろうとそれぞれが思い、やっと開催日を待つのみとなりました。(実は、手落ちはイッパイあったのですが、これもまたこれからの勉強になりました)

3.講演会


 11月7日(日)の朝、好い天気です。やはり、雨が一番心配でした。障害者にとって雨は大敵です。何よりも、あゆちゃんが来れなくなるかもしれなかったですからね。
 10時頃にあゆちゃんからのメールが入り予定より早く着けそうとのことです。12時前に今日あゆちゃんの介助をするKさんと取手駅のホームに迎えに行きました。思っていた電車に乗っていなかったので心配したのですが、予想外の中距離電車から降りてきたのでほっとしました。約2時間の長距離出張です。「おはようございます!!」と元気なあゆちゃんの声! やっと、あゆちゃんが取手に来てくれました。これから、ハードスケジュールが待っています。
 一路、会場である取手市福祉交流センターへ向かいました。控え室にはもうみんなが集まっていて、昼食を待っていました。早速、Kさんの食事介助であゆちゃんも昼食。いつも、講演前は頭の回転をよくするためにあまり食べないそうで、その日も弁当の半分くらいで終わりです。食べながら、簡単な打ち合わせの後、メンバーはそれぞれの持ち場に向かって、準備を始めました。あゆちゃんはというと、レディのたしなみである変身(!?)を始めました。満理子はあゆちゃんの変身作業を楽しそうに見ながら、しゃべりかけていました。
 
 受付あたりに行ったところ、開場前なのに結構たくさんの方が集まってきています。これなら、何とか予定の入場者がありそうな雰囲気でした。そんなところに、あの金さんが奥さんと現れました。金さんは2度の脳出血から見事社会復帰され、その経験をホームページと自らの著書で紹介され、NHKでも番組で取り上げられました。遠いところからわざわざ来ていただき感激です。浅草のオフ会以来です。硬い握手を交わし再会とお互いの健康を喜び合いました。
 その後、ぞくぞくとお客さんが来場し、用意していた約100人分の椅子がほぼ埋まってきました。なんと、市長までも来てくれました。そして、この講演会は取手市の市民活動支援課の全面的な協力もいただき、市の広報課も取材に来てくれました。

真剣なまなざしで打ち合わせをする講演会メンバー 講演会壇上の様子 クリックすると大きくなります・あゆちゃんと満理子
打ち合わせをしながらの昼食 講演の模様 後ろから満理子が突っ込みを・・

 壇上に会の代表のデンクルさんと2人のメンバー(満理子もあゆちゃんの席の隣に)上がり待機しました。開演時間になって、司会のM子さんが会のプロフィールと壇上のメンバーを紹介し、多忙の合間を割いてきていただいた取手市長からお言葉をいただいたあと、いよいよあゆちゃんを迎えました。クリックすると大きくなります・講演会でしゃべるあゆちゃん いまどきのかわいいギャルがドアからはいってきました。かわいい容姿と特徴のある歩き方に、会場のお客さんは、一瞬静まったように感じます。階段を上がる姿にもみんな注視していました。ひざが曲がらないので足を両側に跳ね上げるようにして上がるんです。

 中央の椅子に座り、突然あゆちゃんはマイクを離し、大きな声で「こんにちは、すがやあゆみで〜すっ」と挨拶をしました。ちょっと、びっくりです。すると、あゆちゃんは、「私が講演する時は、最初はこのようにマイクを使わないで挨拶をしたりします。なぜかと言うと、マイクを通して話すと、声はスピーカーから聞こえてきて、目の不自由な人はどこにあゆが居るかわからないのです」う〜ん、なるほど。みんな、すごく納得です。インパクトのあるスタートで、みんな興味がわいてきたようです。

 取手や先日発売されたあゆちゃんがモデルになったコミックの軽い話題からはじまり、あゆちゃん本人も会場の人にもリラックス感を与えてくれました。
講演会場の様子。真剣に耳を傾ける聴講者たち そして、あゆちゃん自身の障害のことを説明。とても、ややこしい障害で珍しいものだそうです(詳しくは「あゆみのGENKIにきらきら☆ぱらだいす」で)。自分の不自由な体での生い立ちや普段の生活スタイル、家族や地域社会の中での自分の立場や考え方を切々と自分の言葉で語ってくれました。仕事、恋愛、ファッション、女性として生きることなど、障害者だからこそ、意識して生活することに、自立への近道があると、独特の視点から話は進みました。重い内容なのですがあゆちゃんはとても軽快な語り口で楽しませ、その内容に引き込まれていきます。あゆちゃんは時間を見計らって、締めの話題にもっていきました。講演に慣れているとは言うものの、みごとな展開と演出と話術です。ただの障害者ではないことは明らかです。

 あゆちゃんは、歳も若いし、一見軽そうなギャルなので、どんな内容の講演になるか、期待半分の方も多かったと思います。  しかし、重い話題の中に面白いエピソードを交え、笑いを誘いながらお客さんを飽きさせません。話が進んでいくうちに、会場のお客さんの顔つきが徐々にかわっいくのが、前から見ていてよくわかり、その時点で、この講演会の成功を確信しました。あっという間に予定の1時間を過ぎました。いつまでも、話を聞きたい気分です。

 最後に質疑応答に入りましたが、質問者がいないので、壇上からあゆちゃんが周囲を見渡して、ピンときた人を指名し感想を聞きました。その指名がまたうまい。一見消極的そうな人やちょっと場違いな人を指すのです。意見など言ってくれないかなあと思っていると、はっきりと適切な感想を言ったり、自分の身の上話も含めて感想を言ってくれたりしました。この場面でも、あゆちゃんの才能を再確認しました。

 そして、満場の拍手であゆちゃんの講演会は無事終わりました。これに関わったメンバーは、この講演会の成功にほっとし、がんばった甲斐があったと思ったのでした。
メンバーとあゆちゃんの集合写真
みんなすばらしい笑顔です

4.その後


 その夜、あゆちゃんを交えて居酒屋で打ち上げ&慰労会をやりました。あゆちゃんは、朝早く起きて、遠路電車に揺られて取手まで来たので、大変疲れているのに、無理やり付き合わせてしまいました。でも、おいしい料理と取手のマジシャンの見事な手さばき?を堪能して、わいわいがやがや・・・
 9時にお開きになり、あゆちゃんと介助者のKさん、デンクルさんと介助者のマジシャン、そしてウチ夫婦はその夜はみんな一緒にホテルに泊まることになりました。
 2次会も考えていたのですが、さすがにみんな疲れていて、各部屋に別れて休むことにしました。私はちょっと飲み足らなかったので、満理子を寝かせてビールを持ってデンクルさんの部屋に遊びにいき、しばらく福祉談義に花を咲かせました。

 翌日、8時に朝食ということで、あゆちゃんは寝不足の顔でレストランに下りてきました。朝食を摂って、あゆちゃんを横浜まで車で送って行きます。せっかく取手に来たのだから、ちょっと穀倉地帯を見てもらって、満理子とデンクルさんも一緒に一路横浜へ。

 今回の講演会では、いろんなことを勉強し、みんなの意思統一もでき、そして今後の活動の方向性も学ぶことができました。
 その後、新NPOに対しての問い合わせもあり、来年発足するNPO法人の大きな第一歩を踏み出せたと思います。
 準備に奔走してくれたメンバーさんには本当にお疲れ様でした。
 御協力いただいた、社協、支援課のみなさん、各施設の方々、ありがとうございました。

 最後に、この田舎町の取手に新しい風を吹き込みに遠いところから来てくれたあゆちゃんに本当に感謝します。ありがとうございました。
打ち上げ会場の様子 宿泊先に持ち込んだエアーマット 横浜みなとみらいであゆちゃんを送っていきながらイタメシランチ
打ち上げ 簡易エアーマット みなとみらい

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