満理子の感性
(満理子の高次脳機能障害について)


平成23年11月1日

 満理子は平成6年にクモ膜下出血を発症し、身体機能全廃の上に高次脳機能障害の後遺症を持ってしまいました。その症状は多岐にわたり、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害等で満理子はその全てに当てはまります。特に、錯話は満理子の介護に大きな支障を来たしています。(錯話とは、実際に体験しなかったことが誤って追想される現象です。その内容も変動することが多い。その時代その時の会話の中で一時的な記憶の欠損やそれへの当惑を埋めるような形で出現する錯話で、多くは外的な刺激により出現し、その内容は過去の実際の記憶断片やそれを修飾したり何らかの形で利用しているようなものを指しています:大阪府のサイトより引用)
 高次脳機能障害は比較的最近注目されている症状で、平成13年から国が定義し研究が始まりました。原因は脳血管疾患や交通事故などによる外的原因による脳へのダメージによるものです。以前は痴呆や認知症、アルツハイマー病と混同されていましたが、研究により新たな認識が得られました。しかし、社会的には認知されず、症状が理解されずに社会生活を正常にできない方が大勢います。そして、その症状は100人の障害者がいれば100通りの症状があるといううことが第三者による介護を難しくしています。
 
 満理子は発症から5年ほどは表情もなく、会話も自分から声を発することがありませんでした。もちろん意欲は全くありませんでした。そして、17年経った現在(平成23年現在)運動機能ほぼ全廃ですが、いろんなリハビリや地域での多くの仲間の支援による脳への刺激で会話は普通にできるようになりました。会話のキャッチボールは一見全く問題はありません。しかし、それが大きな問題です。前述したように一番問題である錯話が理解されず、判断をさせることなどで、施設などに満理子の介護を託した際に必ずトラブルがありました。現在、デイサービスは障害者施設の「あけぼの」のみです。ショートステイは10年ほど利用していません。

 本題に入ります。現在の満理子は、発症前と比較すると基本的な性格は変わっていないと思います。喜怒哀楽の怒と哀がなくなり、毎日を楽しく過ごしています。珍しい症状です。家族にとっては救われる結果になっています。元々、おしゃべりが大好きで、サービス精神が旺盛で(茶道の師範なのでもてなしの心か?)頭の回転は非常に早く、面倒見は良かったです。会話はスムーズで言葉のキャッチボールは完璧です。しかし内容はあくまでもその場しのぎで責任を持てる内容ではありません。思いついたことをストレートに言葉を発します。たまにR指定もあるのでヒヤヒヤします。その言葉には損得勘定や自分を良く見せようという欲が一切ありません。時には相手に傷つけるような発言がありますが、鋭い発言も多くあります。統合失調症の人にも遠慮なしです。それが、場合によって相手の方に大きな影響を及ぼすこともあり、満理子に一目置くようになった方もいます。普通なら相手を気遣って言えないことを、結果的に満理子の発言で、実は相手の方にとって一歩踏み出せるきっかけになったこともありました。

 記憶力はずいぶん良くなりました。特に人の名前はここ3ヶ月でビックリするほど変化があります。ずいぶん前にインプットされた人の名前がすっと出たり、一度しか合ってない人の名前を覚えていたり、驚かされることが最近いっぱいあります。その反面、覚えない人の名前は頑として覚えません。7〜8年間お世話になっているマッサージの先生の名前は意地になっているのか未だに言えません。傾向としてはインパクトのある名前や個性のある人の名前は覚えられるようです。確かに美人やイケメンの名前はよく覚えています。どこにでもある名前(失礼・・・)の鈴木や佐藤、田中、山田などは覚えられません。
 しかし、経験記憶は相変わらず全然ダメです。ついさっき行った所や食べたものは全く覚えていません。もちろん食べたことも・・見当識もほとんど改善されていません。
 いくらか良くなっているのは、意欲や欲求でしょうか。水を飲みたいとか頭が痒いなどの能動的な発言がたまに出るようになりました。満理子とって自立とは、自分がして欲しいことや希望を正確に感じ判断して、それを介助者に伝えられるようになることだと私は思っています。それができることによって、初めて私以外の第三者が満理子の生活を保証できるようになるのです。

 冒頭に戻りますが、今の満理子は運動機能が全廃で、会話はできるものの内容は全く無責任で妻や母親としての役割はほとんど果たしていません。しかし、存在感はとても大きくて、私の生き甲斐になってるし、子供たちも今の母親を自然に受け入れていてそれなりの付き合いをしています。そして、今の活動を通じて知り合った方々への影響も少なからずあると思うので、満理子なりの社会参加はしているのだと思います。今後は満理子の自立に向けて、今私が進めている計画を実現して将来に備えたいと思っています。

さだぼん


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